MQTT通信を活用した給湯機器向けIoTプラットフォーム開発「太陽熱給湯システム-ReTerra」(マルヤス工業株式会社様採用事例)

マルヤス工業株式会社
| 事業内容 | 自動車部品の製造・開発およびEV関連製品開発 |
| お客様の製品 | 太陽熱給湯システム「ReTerra」 |
| 採用アイテム | μC3-WLAN SDK、IoT受託開発、クラウドアプリ開発 |
| CPU | NXP 88MW320 |
今回はマルヤス工業株式会社の事例を紹介します。同社は、自動車部品を中心に高い技術力を持つメーカーで、EV関連や環境対応製品の開発にも注力されています。

課題
IoT開発の知見不足、無線〜クラウドまで一気通貫で任せたい
採用の決め手
類似アプリの開発実績、無線・クラウド双方の知見
効果
異常検知/遠隔操作/CO2削減量データ収集、集計
―――今回インタビュさせていただく貴社製品ReTerraについて教えてください。
杉浦さん:太陽熱給湯システム「ReTerra」は、集熱器で取り込んだ太陽熱を蓄熱タンク(200L)に伝え、お湯をつくる再生可能エネルギーシステムです。給湯時にはガス給湯器と連携することで、ガス使用量を抑え、光熱費とCO₂排出の双方を削減します。
主な特長
● 高効率な熱変換
● 軽量・薄型で屋根への負担を軽減
● 200Lタンクで災害時の非常用水としても利用可能対応
● IoT保守機能「ReTerra LINK」による24時間監視
● 長期保証とJ-クレジット対応

マルヤス工業株式会社
技術本部 第二技術開発部
第三開発グループ グループ長
杉浦 孝弘様

導入前
―――今回のインタビュは共同開発を担当した 弊社技術者も回答しています。

イー・フォース株式会社
開発部 Web システム開発
エンジニア 鳥居 洸希
マルヤス工業株式会社
杉浦 孝弘様
イー・フォース株式会社
開発部 部長 / 執行役員
高田 広貴
IoTプラットフォーム開発無線LAN通信〜クラウドまで
―――現在使用しているeForce製品について教えてください。
杉浦さん:加賀FEI社製無線LANモジュールWKM320AA1向けのアプリケーションを開発していただきました。加えて、管理者向けのクラウドアプリ、見守りサービス登録用のWebアプリも開発していただきました。
―――具体的にどのような機能/制御に弊社製品を使用していますか。
杉浦さん:ReTerraでは、無線LAN通信部分、CO2削減量の算出、クラウド連携、スマートフォン通知、機器管理など、ReTerraのIoT機能全般にわたりイー・フォース社の製品・技術を活用しています。
今回のIoTシステムの導入背景について
―――製品開発において求められていたシステム要件や課題について教えてください。
杉浦さん:機器で発生するさまざまな異常を検知し、管理者へ即時に通知できる仕組みが必要でした。また、異常が発生した際には、管理者が遠隔操作で復旧を行えるようにすることや、CO₂削減量を収集、集計し、いつでも確認できる環境の構築も求められていました。さらに、システムを利用される高齢のお客様を、離れて暮らすご家族が見守れる付加的なサービスについても検討していました。特に、異常の早期検知と遠隔操作を活用した保守・メンテナンスの効率化は、システムにおいて重要なポイントとなっていました。
―――共同開発を行う企業を見つけるのに苦労されましたか?
杉浦さん:当初はクラウドアプリの開発企業へ相談をしていましたが、検討を進める中で、リモコンからクラウドへ通信する仕組みまで一貫して対応できる企業が少なく、クラウドアプリ開発だけでは実現が難しいことが分かってきました。 その後、改めてパートナー候補を探す中で、イー・フォース社のWebサイトに掲載されていた、当社に近いアプリケーションの導入事例を拝見し、開発実績と技術力が合致すると判断して依頼を決定しました。
―――採用した無線LANモジュールの仕様について教えてください。
高田:採用したのは加賀FEI社製無線モジュール「WKM320AA1」です。2.4GHz帯の無線LAN通信が可能で、ステーションモードとμAPモードに対応しています。ステーションモードは無線LANルータ接続に、μAPモードはモジュール自体がアクセスポイントとなり、スマートフォンアプリからの初期設定や接続設定に利用されます。また、WPA2・WPA3といった最新のセキュリティ規格にも対応しており、WPA2接続時にはWPSによる自動接続も可能です。
導入後
MQTTで実現した機器とクラウド間の通信
―――機器とクラウド間の通信について教えてください。
鳥居:機器とクラウドの通信には、Webシステムで一般的に使用されるHTTPだけでなく、当社でも実績の多いMQTTという通信規格を採用しています。
高田:今回開発したクラウドアプリはMQTTブローカーとしても機能しています。各家庭に設定された機器は、クラウドとMQTT通信をすることで、管理端末からの遠隔操作を実現しています。
鳥居:MQTTのメリットは、受動的にデータを受信したい端末をサーバとして立ち上げる必要がない点です。多くの通信規格では機器のサーバ化とIPアドレスの公開が必要ですが、そのような困難な課題を解消できます。この仕組みでは、サブスクライバーはクライアントとして機能し、MQTTブローカーがサーバの役割となります。これらの特性から、今回はMQTTの活用が有効だと判断しました。
杉浦さん:途中で機器との接続が切れた場合は、どのように接続を維持しているのでしょうか。
鳥居:MQTTの基本仕様では、セッションが切断された場合そのまま切断状態となります。ただし、本システムでは無線LANモジュール側で切断を検知した場合、自動的に再接続を行う仕様となっています。
高田:MQTTプロトコルはTCP/IP接続のため、一度確立された接続は維持されます。接続状態を確認するため、MQTTのPINGメッセージを定期的に送信し、応答がない場合は切断と判断し、再接続処理を実行することで、接続を維持しています。
―――μC3-WLAN SDKについて教えてください。
高田:ReTerraのリモコンにご採用いただいた「μC3-WLAN SDK」は、RTOS、TCP/IP、セキュリティなど、IoT製品開発に必要なソフトウェアが含まれています。特に、SDKに含まれるRTOS「μC3/Compact」は、マイコン内蔵の限られたメモリ環境で動作するように最適化されています。
クラウドへの送信不具合やデータ重複が発生
―――開発の中での特徴的なエピソードはありますか?
杉浦さん:2024年の運用開始後、CO₂削減量データの送信に不具合が発生しました。本来は機器からクラウドへ60分ごとに送信されるデータが、数時間受信されなかったり、同じデータが重複して受信される事象が確認されました。
高田:この課題の解決には、機器側とクラウド側の両面での対策が必要でした。機器を設置したお客様環境では、無線LANルータとの距離や障害物の影響で電波強度が低く、ログからもデータ送信時に通信切断の記録も確認されました。データ送信が一時的に失敗しても再送できる仕組みを実装しました。
鳥居:データの重複への対応は、クラウド側で行いました。データ送信失敗時の対策として、機器側でのバッファリングだけでは、機器側でデータが確実に送信されたかの判断が難しいため、クラウド側で受信したデータが新規か否かを判別する仕組みを実装しました。具体的には、機器から送信されるデータにタイムスタンプを付与し、既に同時刻のデータが存在する場合は2回目以降のデータを破棄する処理を行っています。
特定のルータでのみ発生する通信不具合
―――特定のメーカーのルータ使用時のみ通信不具合が発生されたとお聞きしました。
高田:マルヤス工業社の評価用ルータにおいて通信が頻繁に切断される問題があり、実機調査を行いました。その結果、当時のμC3-WLAN SDKでは非サポートだったA-MSDUパケットがルータ側から送信され続けていることが原因と判明しました。通常、A-MSDUパケットが非サポートの機器に対しては、ルータ側で送信を控えるはずですが、このルータは送り続けていました。これにより無線モジュールがパケットを処理できず破棄し、通信切断が生じていました。2025年3月には、A-MSDUパケットに対応したμC3-WLAN SDKをリリースし、問題を解消しました。
―――A-MSDU(Aggregate MAC Service Data Unit)パケットとはなんでしょうか。
高田:A-MSDUパケットは、大容量データ通信時に使用される規格です。通常のパケット通信では使われず、ファームウェア更新など大容量データをダウンロードする際に使用されることがあります。今回の事象も大容量なデータ転送時に、通信が停止していました。
クラウドアプリ開発時のエピソード
―――機器管理システムを開発する際にWebブラウザ特有の課題があったとお伺いしました。
鳥居:機器管理システムの一覧画面から詳細画面へ遷移した後、「戻る」ボタンで一覧画面に戻ると、選択した状態が保持されないという問題がありました。Web画面上のUI操作では制御ができますが、ブラウザの「戻るボタン」や「更新ボタン」の操作はアプリ側で検知できないため、Webブラウザ特有の課題として対応を検討しました。
―――UIデザイン部分でも、議論を重ねられたとお伺いしています。
鳥居:デザイン面では図や文字サイズの調整など、お客様からのご指摘を踏まえた改善を行いました。開発側の視点では最適と考えていた表示も、実際の利用者にとっては必ずしも使いやすいとは限らないため、お客様と密に連携しながら調整を進めました。
セキュリティ強化を目的としたログイン認証
―――今回機器管理システムのログイン時にはどのような認証が使われていますか?
鳥居:マルヤス工業社からのご要望を受け、管理者画面へのセキュリティ強化として、MFA認証を採用しました。従来のIDとパスワードのみでの認証では、情報が漏洩した場合に第三者がアクセスできてしまうリスクがありました。そこで今回採用した認証方式では、事前に登録された端末にワンタイムパスワードを発行するため、仮にログイン情報が第三者に知られた場合も、登録済み端末が手元になければ、管理者画面へのアクセスはできません。
―――なぜこの認証方式を採用したのでしょうか。
鳥居:弊社からご提案した理由は2点あります。1点目は長期間にわたり安定した運用実績がある認証サービスであること、2点目は必要なSDKが用意されており、比較的容易に実装できる点です。
杉浦さん:情報漏えいや不正操作を防ぐため、社内であっても関係者以外は操作できないよう、強固な認証が必要でした。そこで、より安全性の高いMFA認証を採用しています。 他の認証方式も検討しましたが、長期的な運用や部署異動といった状況にも柔軟に対応でき、利便性と安全性の両面で優れていることから、MFA認証が最適だと判断しました。
お客様のIoT機器開発をサポートするイー・フォース
―――イー・フォースの対応についてご意見はありますか?
杉浦さん:IoT や Web アプリに詳しくない企業も多い中、イー・フォース社の担当者様には、必要な情報を的確かつ分かりやすくご説明いただき、スムーズに開発を進めることができました。
―――イー・フォース社として、今後はどのようにサポートしていきたいですか?
鳥居:今回の事例を通じ、マルヤス工業社へのサポートや、J-クレジット関連の環境整備、エンドユーザー様へのサポート体制構築など、多方面で貢献できたと感じています。世界の人口から見れば一部かもしれませんが、多くの方々の役に立てたという確かな実感を得られました。今後も培ってきた知見を活かし、より多くの方々に貢献できるよう努めてまいります。
高田:弊社はIoT開発という点で、豊富な経験がございます。無線通信、クラウド、スマートフォンアプリの開発、システム開発全般について、仕様検討の段階から一貫してご支援いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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