「採用の一番の決め手は、産業用イーサネットの環境が整備されていたこと」

インダストリアルコンピュータ「RICOH AP-10A」

リコーインダストリアルソリューションズ株式会社

 リコーインダストリアルソリューションズ株式会社は、リコーグループが長年にわたり培ってきた光学技術や画像処理技術、IoT技術をもとに、産業界のお客様のニーズを先取りした精密部品やサービスを提供しています。そこで、主力製品の1つであった産業用PCを、PLCと一体化し汎用性を高め、簡単で信頼性の高い自動制御システムの構築を支援する目的で開発されたのが、2017年にグッドデザイン賞を受賞したインダストリアルコンピュータ「RICOH AP-10A」です。

RICOH AP-10A

 「RICOH AP-10A」は、機械の動きをプログラミングするWindows PCと、動きをリアルタイム制御するPLCを一体化する事で、機器同士の接続作業の削減と通信の安定化を行い、従来同等機から体積を90%削減したコンパクト化と高品位な外装デザインにより設置自由度の向上を実現しています。

 またそれにより、自動化が進む物流拠点や店舗などの多様な現場に導入しやすく、外装だけでなく、端子の配置や表記は細部まで考慮し見やすさも追及された製品になっています。

 そして、PLC側の基板に使用したルネサスエレクトロニクス社(以下、ルネサス)のRZ/T1にμC3/Standard、acontis社のEtherCAT/Masterスタックおよびアイ・エル・シー社(以下、ILC社)のINTALOGICを採用しています。

ソフトPLCを開発するタイミングでちょうど出会ったのがμC3

産業スマートシステム事業部
エッジコンピューティング事業室
EC開発三グループ
出塚 岳広様

――イー・フォースのことを知ったきっかけは?

ルネサスのR-INコンソーシアムのイベントです。そこでは、イー・フォースだけでなく、IARシステムズ社(以下、IAR)、JSLテクノロジー社やILC社等と面識を持つ事ができました。その後、インダストリアルコンピュータを開発する段階になり、各社との連携をスタートさせました。

採用の一番の決め手は、環境が整備されていたこと

――数あるRTOSの中でもμC3を選定した理由は?

一番は、環境を作るのにあまり苦労したくなかったことです。足回りのドライバはルネサスのサンプルを使って、あとは統合開発環境であるIARのEWARMとの相性が良かった。また、EtherCAT/MasterスタックやINTALOGICのサンプルが既にμC3に対応していたのもすごく後押ししました。

――ルネサスがR-INやRZ/Tをユーザーにとって使いやすくするためにR-INコンソーシアムを開いてパートナー同士の連携を深めているというのがまさに成果として現れた例ですね。

採用後の効果をいくつも実感

――採用後の効果はいかがでしたか?

一番良かったのは、あるお客様で、特定のタスクでCPUを占有してしまい、他にディスパッチしない問題が発生しましたが、タスクレベルを下げ、プライオリティを変更する事で、お客様の問題を解決する事が出来ました。OSレスであればもっと時間が掛かっていたと思います。

次に、排他制御もとても便利でした。ハンドラの排他制御がOSレベルで実装されているので、安心して使えました。自前で作るとバグの温床となりやすい上に、優先順位などレベルを分けてプログラムを書くのは至難の技だと思います。

次に挙げられるのは、品質が属人化しなくなったこと。μC3というよりRTOSの導入効果になりますが、OSレスの場合、エンジニアのスキル差が品質にも影響してきますが、RTOSベースにした事により、品質が均一化されました。

あと、起動時間が短くなったのはもちろんですが、機能追加の面でもとても楽になりました。OSレスの場合、機能追加すると元々の機能に影響が出たりして神経を使うのですが、ソースコードを数行追加するだけで機能追加ができたのが印象的でした。

――採用後、問合せが少なかった理由は?

イー・フォースのμC3もILC社のINTALOGICもソースコード提供なので、不明点があってもソースコードを読んで理解しました。あと、開発後に気づいた事ですが、μC3のドキュメントに自分が知りたい事が殆ど網羅されていたのでもっと活用すればよかった(笑)

――開発期間はどれくらいでしたか?

約10ヶ月間でした。EtherCAT/MasterスタックだけでなくMECHATROLINK-Ⅲのスタック等のμC3への実装作業を自社で行ったにしては短期間での開発が出来たと思います。それはやはり産業用イーサネットの環境が最初から整っていたからというのが大きな要因です。

今後、ローエンドからハイエンドまで積極的に製品展開を行っていきたい、とのことでした。

今回、イー・フォースは産業用途向けソリューションにおけるパートナーとの連携により、開発期間の短TAT化に貢献しました。

会社概要

会社名 :リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
設立  :2014年6月4日
所在地 :神奈川県横浜市港北区新横浜三丁目2番地3
事業内容:光学・精密機器、製造・検査装置、材料・部品、ソフトウェア・システム等の開発、設計、製造、販売、サービス
URL  :http://www.rins.ricoh.co.jp/