広がり続ける「工場のネットワーク化」
はじめに
イー・フォースは、自社のRTOS(μC3)やTCP/IPスタック(μNet3)をベースに、「インダストリー4.0」の実現に向けたソリューション構築に取り組んでいます。今回のコラムは、産業用イーサネットが普及してきた背景や弊社が取り組んでいる主要なプロトコルの実現方法やサポート窓口について紹介します。
概要
ここ数年、インダストリー4.0やIIoT(Industrial IoT)への取り組みがさらに活発化してきています。しかし、その実現には、「高速オートメーション」と「ITシステム」の『垂直通信』と、工場における機械の『水平ネットワーキング』への同時対応が必要になってきます。また、小型のセンサー類からエンタープライズシステムまで、シームレスな相互接続が求められています。今、その事実上の選択肢になっているのが、産業用ネットワークの一つである『産業用イーサネット』です。
では、「従来の工場」と「産業用ネットワークが採用された工場」では、どのような違いがあるのでしょうか?
従来の工場
従来の工場では、各機器を動作させるためのプログラムが予め設定されていました。そのプログラムによって、PLCからの命令を受け、設定された通りの動作を行っていました。
こうした機器を動作させるためにはON/OFFなどのシンプルな情報で十分だった為、センサ等の信号線を各機器のコントローラやPLCへ接続して、PLCとHMIはRS232Cなどの古い通信規格で通信されていました。
しかし、旧規格の通信では扱える情報量の制限や通信速度等の問題がありました。それだけではなく、HMIに表示される生産台数や異常情報を作業者が記録して、生産管理端末に手動で入力する事による記録ミスや不良品の大量発生などの問題が起きていました。
それらを受け、工場内のシステムには、生産管理の自動化や強化が必要になってきました。
そういった中、2000年代に入り、生産や流通工程をデジタル化する事で工場全体の自動化を目指す「ドイツのインダストリー4.0」や「米国のインダストリアル・インターネット」、「中国の中国製造2025」、「日本のConnected Industries」等が発表されました。
表:各国の製造業における国家戦略
国名 | プロジェクト名 | 主要メンバ |
---|---|---|
ドイツ | インダストリー4.0 | ドイツ連邦情報技術・通信・ニュースメディア連盟、ドイツ機械工業連盟など |
米国 | インダストリアル・インターネット・コンソーシアム | GE、AT&T、シスコシステムズ、IBM、インテルなど |
中国 | 中国製造2025 | 委員長:馬凱副首相 副委員長:工業情報省、国務院など |
日本 | Connected Industries | 経済産業省や重点取組み分野の分科会に参加の民間企業 |
また、ロボットやセンサ類も改良が加えられました。
従来のロボットやセンサ類は、シンプルな情報だけを扱っていました。しかし、用途の拡大に合わせて、より大量の数値や文字情報をリアルタイムに扱う必要が出てきました。このため、情報を大量かつ高速に通信できる新しい次世代の通信規格が求められるようになりました。
当時、装置内で使用される機器やデバイスは様々なメーカの製品が混載していました。そこで、どのメーカの製品でも接続して通信できるように、オープンな産業用ネットワークが開発されました。
その後、各機器メーカはこれらの通信規格に準拠した製品の開発をするようになりました。
産業用ネットワークが採用された工場
それでは、産業用ネットワークが採用された工場の設備構成例を見て行きましょう。
複数の文字や数値情報を出力するセンサ類は、PLCと産業用ネットワークで接続されるようになりました。また、ロボットコントローラもこれらの産業用ネットワークに対応し、ロボット自体の情報に加えロボットに直接センサの情報を簡単かつ大量に取り扱えるようになりました。このため、人手作業工程の自動化が出来るようになりました。
また、生産管理の強化として生産管理用の端末をマスタ局、各種装置のPLCをスレーブとして各装置を接続することで、次の工程への生産情報の引継ぎや各装置の情報をオンライン上で取得できたり、生産管理が簡単に行えるようになりました。
その結果、製品1個単位で生産情報を追跡可能にできるトレーサビリティの構築や生産情報の「見える化」、不良・異常発生時の迅速な対応が可能になりました。
- 工程間の生産情報の共有
- 各装置の状況をオンライン上で把握
- 生産情報を追跡可能にするトレーサビリティシステムの構築
- 生産情報の可視化、不良・異常発生時の迅速な対応
さて、産業用ネットワークには多種多様なものが存在します。
こちらのページでは、現在広く普及している産業用イーサネットについて詳しく紹介しています。併せてご覧ください。